2026年1月18日
ぐるぐるしたらどうしよう ― そのときの行動の目安 ―
◆反芻(ぐるぐる思考)について
たとえば、仕事での出来事を何度も思い返して「どう思われただろうか」と考え続けてしまったり、 すでに終わった選択について「あれは正しかったのか」と頭の中で検討を繰り返したり、 将来のことを考え始めて「このままで人生は大丈夫なのか」という問いから抜けられなくなることがあります。
考えても結論が出ないと分かっていても、気づくとまた同じ思考に戻ってしまう―― こうした状態を反芻(はんすう)と呼びます。
▪ 反芻とは
反芻とは、反芻動物が同じ食べ物を何度も噛み直すように、 同じ考えが頭の中で何度も繰り返され、止めようとしても止まらない状態を指します。
▪ なぜ止まりにくくなるのか
特に強いストレスがかかっているとき、脳の「司令塔」にあたる前頭前野(判断や切り替えを担う働き)は、 機能が低下しやすくなります。
この状態では、DMN(デフォルトモードネットワーク)と呼ばれる、 「自分はどういう人間か」「これまでの自分」「これからの人生」といった 自己参照・自己物語・未来予測を担う回路が、制御されにくくなります。
その結果、次のような問いが何度も頭に浮かび続けます。
- どう思われたのか
- この選択は正しかったのか
- 人生は大丈夫なのか
しかし、これらの問いは構造的に答えが1つに決まらない問いです。 そのため、どれだけ考えても終わらず、思考はぐるぐると回り続けてしまいます。 結果として、頭は休まらず、不眠や強い疲弊につながっていきます。
◆ぐるぐる思考の「扱い」の難しさ
反芻がつらくなると、多くの人はまず「考えないようにしよう」「気にしないようにしよう」と試みます。 しかし実際には、考えないようにすること自体が、とても難しいのが現実です。
▪「考えないようにする」は、なぜうまくいかないのか
よく知られている現象に、思考抑制の逆説効果(ironic process theory)(通称:しろくま効果)があります。 「しろくまのことを考えないでください」と言われると、かえってしろくまが頭に浮かんでしまう、という現象です。
反芻でも同じことが起きます。
- 考えないようにしよう
- また考えていないか確認する
- 気づいては自分を責める
このように、考えない努力そのものが、思考への注意を強めてしまうのです。
▪「考えない」ことで、かえって悪化することもある
さらに難しいのは、「考えないようにする」ことが、 必要なことからの回避につながってしまう場合がある点です。
たとえば、次のような本来は解決できる問題まで一緒に避けてしまうと、悪循環が生まれます。
- 本来は対応すれば解決する仕事の問題
- 行動すれば小さく済む用事
- 調整すれば済む人間関係
反芻がつらいあまり一緒に避けてしまうと、問題は先送りされ、現実的には悪化し、 脳は「避けると楽になる」と学習してしまいます。 その結果、ますます不安やぐるぐるが強まりやすくなるという悪循環が生まれます。
だから「気合」ではなく「扱い方」が必要になる
このように、反芻は「考えないように頑張ること」で何とかしようとすると、かえってこじれやすい状態です。 必要なのは、弱まった司令塔の代わりに、 ぐるぐるが出てきたときの扱い方を、あらかじめ整理しておき、その都度それに沿って対応してみる こと――そんな関わり方です。
◆ぐるぐるしたときの行動の目安
ぐるぐると同じ考えが回り始めたとき、まず大切なのは 「止めようとすること」ではありません。
いちばん最初にするのは、仕分けです。
これは「行動で少しでも変えられる問題」だろうか?
次のような点に当てはまるかを確認します。
- 行動すれば、何かが変わりそうか
- 今日〜数日で一区切りがつきそうか
- 「ここまでやればOK」という終わりを決められそうか
- 小さく切って、10分程度で着手できそうか
- 放置すると、現実的に悪化しそうか
具体例(YES寄り)
- 上司や同僚に連絡すれば済む用件
- 予約・提出・準備など、期限がある作業
- 説明不足や誤解を、話し合いで調整できること
- 書類や資料を一部だけ作れば前に進むこと
具体例(NO寄り)
- 相手が本当はどう思っているか
- 自分はダメな人間なのではないか
- この選択は、人生として正解だったのか
- 将来が絶対に大丈夫かどうか
迷ったときの「見分けフレーズ」
- 「動いたら現実が少し変わる?」 → YES
- 「答えが出ても、また不安が残りそう?」 → NO
- 「元気なときに考えればいい問い?」 → NO
◆YES の場合(行動で変えられる問題)
- 完璧にやろうとしない
- まずは10分だけ動く
- 「うまくやる」より、「終わらせる」を目標にする
小さな行動の例
- メールを下書きだけ作る
- カレンダーに候補日を1つ入れる
- 必要な資料を1枚だけ探す
- 相談先の名前をメモする
- 「今は難しい」と連絡を1通入れる
ぐるぐるへの対応は、「考える・考えない」の二択ではありません。
問題を仕分けて、扱い方を変えることがポイントです。
◆NO の場合(解決できない問い)― 落ち着くモードでの対応 ―
NO、つまり 「考えても答えが1つに決まらない問い」だと仕分けた場合、 次に行うのは「考え続けること」ではありません。
落ち着くモードに切り替えます。
▪ 今は扱わないと判断する
まず最初に行うのは、その問いを今は取り扱わないと決めて土俵から降りることです。
- 正しい答えを探さない
- 納得しようとしない
- 評価を確定させようとしない
- 考えを止めようと頑張らない
▪ 頭の中から現実に戻る 〜グラウンディング〜
次に行うのは、考えの世界から「今この瞬間の現実」に意識を戻すことです。
考えを分析するのではなく、「今ここ」を確認するのが目的です。
- 今は何時?
- どこにいる?
- 体のどこがいちばんつらい?
これらの質問に自分で短く答えることで、意識が「考え」から「今」に戻ります。
▪ 身体から落ち着かせる 〜生理調整〜
ぐるぐるしているときは、身体と神経の興奮が上がっています。
体を先に落ち着かせると、あとから気持ちや考えの強度も下がってきます。
- 呼気を長めにした呼吸
- 温かい飲み物・シャワー
- 冷刺激(手を冷やすなど)
- 軽い動き(歩く・肩回し)
▪ 時間でやり過ごす 〜感情は自然に落ち着く〜
感情や不安は、時間とともに自然に下がる性質があります。
今の強さのまま、しばらく時間が過ぎるのを許します。
- 目安は 10〜20分
- 「考えない努力」はしない
- 軽い行動をしながら過ごす(お茶、シャワー、窓を見る、単純作業など)
成功の基準
答えが出た ❌ / 納得できた ❌
👉 強度が少し下がったら成功
答えが出ない問いは、今は考えず、落ち着く。
それは逃げではなく、消耗を減らすための現実的で回復的な対応です。
★さいごに
ぐるぐるしても大丈夫です。
うまく止めなくても、正しく扱えれば、
気持ちは少しずつ落ち着いていきます